武田実験室レンタルラボ化の操業に反対する声明

研究施設のレンタル化で 湘南地域をいっそう危険にさらす
武田薬品バイオ研究所の操業に反対する    

2011年11月7日  武田問題対策連絡会

 武田薬品湘南研究所は、化学合成実験棟の背後に生化学実験棟を、さらに生化学実験棟の背後に動物実験棟を隣接配置し、異なる機能を有する3つの棟を1セットにした、機能性を誇示する巨大実験施設となっている。 
敷地の奥の北側には動物実験棟が並ぶ。その動物実験室全体の延べ床面積は約10haであり、湘南研究所は使用済み実験動物を処分する1日当たりの重量が900kg(最大)であると行政に申請していたことから推定すると、当研究所は年間マウス換算600万匹の動物実験が実施可能である。

9月26日付け日本経済新聞の記事によれば、その巨大な実験場に「外部の研究者が利用できる各種の研究施設を設ける」という。そして武田が設備を提供する対象者は「大学の研究者やベンチャー企業」であり、それら外部研究者が「新薬候補の化合物を生み出す理論を構築しても、十分な設備がないために化学合成ができない場合」に支援し、成果を共有する、という。
 情報は新聞記事だけであって、未だ市民にも行政にも、記事以上の説明は武田薬品からなされていない。
化学合成実験室はもとより生化学実験や動物実験の実験室も貸し出すとなれば、国内、国外の研究者を強く引きつけるであろう。しかし危険な研究材料を扱うバイオ研究所の管理は、P3施設以下種々の実験室への入退室について研究所員といえども厳しく制限されると聞いている。従って、武田バイオ研究所実験室のレンタルラボ*化については、先ず危険性について検討せざるを得ない。
(注*:ラボとは、実験や実証ができる研究施設をいう、英語のラボラトリーの略。 レンタルとは、研究所の施設などを貸し出しすること。)

 研究所の安全管理を一般的にいえば、実験は計画の段階で危険な操作と危険度、その対処方法を明確にし、次いで備品を手配し実験手順や担当者を定めることで、安全管理について一定の水準が保障される。実験段階では、実験担当者から進捗と安全状態が逐次報告される。これらが事故を防止し且つ発見する為の基本的手立てである。
 しかし、レンタルラボの場合には、外部実験者が危険性の程度と対処方法を明確化できるか不明である。実験中に起こる不測の事態にたいし適切な対応が可能か?研究所建物の構造と実験室の装備を熟知する社内研究員と異なるうえに、実験上のスキルにもバラツキがあるとすると、外部実験者の参入自体が研究所全体の危険性を格段に増大させ、研究所周辺の市民を危険にさらすことになる。
病原体について、無色・無臭で、即時に検出することができないので 汚染が 確認できないことも、レンタルラボの安全確認を困難にする。
 他方、武田薬品バイオテロの危険性を口実に、市民にたいし秘密主義をとっている。そして、環境保全の為の設備でさえ設置状況や それらの性能について一切を秘匿しようとしている。だが、実験室をレンタル化すると、もっと防衛体制は弱まるのではないか?懸念される問題である。

 湘南研究所の規模は、創薬研究所では日本一であり、世界でもまれな巨大さである。それは環境面、運営面の両面からして適切なのか?当会を含め多くの人々が疑問視してきた。今回、9月に新聞へ発表した内容は新研究所を作った目的(大阪十三と筑波の両研究所を一つにまとめる)を根底から変える計画であって、これまで市民に説明してきたものと根本的に相違する。
前出した動物実験エリアが10haという余りの巨大さにたいし、1200人の研究員をしても実験設備をフルに活用しきれないような、過剰な規模の研究棟を建造したことは問題である。 やはり武田薬品は早い時期から、共同実験とかオープン・イノベーションとかの美名の下、レンタルラボ化を計画していたのではなかろうか?疑わざるを得ない。
  地元の両市長は、それぞれ40万市民、17万市民を代表する立場で、研究員1200人を擁する研究所を建てた会社社長と環境保全協定を締結したが、過大な設備を建造しレンタルラボとして活用することなどはむろん知らされていなかったであろう。 市民の命と財産を守るという市長の立場からすれば、今こそ市民抜きに協定を結んだことを反省し、当会が主張し県内外にも優れた先例のある「安全協議会」の設置をこそ、前向きに検討すべきである。

 バイオ研究所の実験施設を社外研究者にレンタルすることは、周辺市民にとって決して見過ごすことのできない危険性をはらむ重大問題である。 武田薬品は、たとえ施設の稼働率向上がむずかしくなろうと、バイオ実験室のレンタル化を中止すべきである。
 以上の観点から考え、この度研究所が進出した湘南の地は、実験室のレンタルラボ化の実施によって、いっそう危険にさらされることが明らかであるので、当会は、レンタルラボ化を計画する武田薬品バイオ研究所の本格操業にたいして反対を表明するものである。                                以上